6月7日 アルゼンチン対イングランド 札幌ドーム 20時30分開始

札幌市内の様子

前日のニュース等で既に両国のサポーターが札幌にやって来ているという報道を見て、まずは大通り公園へ行ってみると大勢のサポーター(ほとんどがイングランド、以下E)がいました。芝生の上では早くも酒盛りが始まり、大声で歌う人がいたり、異様な盛り上がりでした。アルゼンチン(以下A)サポーターと仲良く?話をしている光景もあり、一触即発という雰囲気ではなかったのですが、信号待ちをしているシャトルバスの中からAサポーターが叫ぶのを見たEサポーターはバスに向かってビールをかけたのでした。付近には警戒中の警察官もたくさんいたのですが、取り押さえることもなく、バスもそのまま走り去ってしまいました。フーリガンの一端を見たようでこの後が少し不安になってきました。不安は更に強まっていく?
シャトルバス
呉越同舟?

不安が的中

前回同様、シャトルバスで移動、前回よりもスムーズに入場することができた(チェックが緩くなった?)ことに少々驚きながら自分の席を目指す。前回はメインスタンドだったが、今回はバックスタンドでE寄り。バス乗車中から不安だったことが座席につき現実のものとなる。周りはE一色!テレビで見ていた人はわかると思いますが、赤いシャツだらけ。日本人はホーム用の白いシャツを着ている人がほとんどでしたが、本場Eサポーター達は赤の方が断然多いようです。Aサポーターはゴール裏の一角だけで、メインスタンドもバックスタンドもEサポーターに埋め尽くされていると言っても過言ではなく(8対2の割合)、隣に座った兄ちゃんも私と同じAのレプリカシャツを着ていたのに「なんかやばそうな雰囲気ですね」と言ってユニクロの白いシャツに着替えてしまいました。私は着替えを持っていなかったし、本命アルゼンチンの応援のためなら殴られても構わない(?)ので、そのまま堂々と座っていました。前列は全員Eサポーター、私を見た一人が何か英語で話しかけてきました、「ナイスガイ」という言葉だけが聞き取れましたが、きっと「いい男」という意味ではなく「Aのシャツなんか着ていい根性してるな!」と言ったのでしょう。「因縁の対決」、前回の決着をこの札幌でつけるんだいうEサポーターの気持ちが強く伝わってきました。

本物のブーイング

会場内のスクリーンではFIFAのCM(過去のゴールシーンを中心に編集したものでペレやベッケンバウアーが出てくる映像)が流されていますが、突然Eサポーターからブーイングが起こりました。最初はなぜブーイングが起きているのかわからなかったのですが、86年メキシコ大会でのマラドーナの映像に対してだったのです。今から16年前のことですがEサポーターにとっては一生忘れられない屈辱的なシーンなのでしょう。練習のためにA選手がピッチに登場した時のブーイングは更に強くなり、E選手に対する歓声とは対照的でした。しかし、ブーイングが最高潮に達したのはこの後のスターティングメンバーの発表の時で、A選手の紹介が始まると同時にブーイングも始まり、バティストゥータの時に強くなり、宿敵シメオネの時にピークに達しました。Aファンの私にとっては悔しいことなのですが、一人で大声を出して痛い目に遭うのも嫌なのでじっと我慢しました。

アルゼンチン
イングランド

いよいよキックオフ

大歓声の中、イングランドボールでキックオフ、周りのEサポーターからは「COME ON ENGLAND」の大合唱。序盤はお互いゴール前まで攻め込むが決め手に欠け得点にならず、会場内が盛り上がってきたのは23分、バットの縦パスを受けたオーウェンの右からのシュートがゴールポストにはじかれる、一斉に立ち上がるEサポーターの歓声、そしてため息。直後アルゼンチンの逆襲、キリのクロスにバティがヘッドで合わせるがキーパー正面で先制点ならず。30分にはサネッティのクロスのこぼれ球をキリがボレーシュートするが枠をはずす。対するイングランドもベッカムのFK、CKにどうしても合わせることができない。そして42分オーウェンがペナルティエリア内でポチェッティーノに倒されPKを獲得。キッカーはイングランドのキャプテン背番号7ベッカム、会場は全員総立ち。主審のホイッスルが鳴り、ベッカムの右足から放たれたシュートは見事にゴールネットを揺らした。Eサポーターの割れんばかりの大歓声、この瞬間私は札幌ドームではなくオールド・トラッフォードスタジアム(ベッカムの所属するマンチェスター・ユナイテッドのホームスタジアム)にいるのではないかと勘違いするくらいの盛り上がり。前列のEサポーターは飛び上がって喜び、勢い余って私の方に倒れかかってきました。4年前のフランス大会では途中退場し、蹴ることのできなかったPKをこの札幌で決めたベッカム。4月のヨーロッパチャンピオンリーグ準々決勝第2戦ではアルゼンチン選手の猛タックルで左足甲を骨折、今大会の出場も危ぶまれましたが驚異的な回復で復帰し、このピッチに立つ彼の姿にはアルゼンチンサポーターの私も素直に拍手を送りました。

アルゼンチン敗北

アルゼンチンは後半ベロンを下げ、アイマールを投入。ベロンはどこか調子が悪かったのか、それともマンチェスターでのチームメイトベッカムにPKを決められたのがショックだったのか(そんなことはないと思うが)、ともかく司令塔ベロンの交代はアルゼンチンにとってマイナスになると思われていたが、15分にはバティも交代、通算11得点目はお預けになってしまった。それでもアルゼンチンはオルテガ、シメオネの個人技などで攻め込むが決めることができない。徐々に残り時間も少なくなり、ついにロスタイムに突入、時間はわずか2分。アルゼンチンの攻撃も実らず終了のホイッスル。会場からは大きな拍手と歓声、喜ぶイングランドサポーター、うなだれる私。前評判では有利だったアルゼンチンまさかの敗北で予選突破に黄信号、対するイングランドは大きく前進。「因縁の対決」と言われたが試合内容は非常にフェアだった、激しいタックルなど遺恨を残すようなプレイもなく、いい試合だった。まだ全試合が終わっていないが、今大会でのベストマッチにあげられると思う。アルゼンチンには勝って欲しかったが、こればかりはどうしようもないので諦め、次の試合に期待しましょう。

試合後の風景

ドームを出てシャトルバス乗り場へと向かう。イングランドサポーターは歓喜の雄叫びをあげている、アルゼンチンのシャツを着ている私に向かって何か言ってくるが、さっぱりわからない。「コングラチエーション」と言って握手するのが精一杯、でもアルゼンチンが勝っていたら握手どころではなく、殴られていたかも。バスは大通り公園に到着、バスを降りると朝日新聞が「イングランド、激戦制す」の号外を配っていました。公園内の様子を見ると昼間よりも多いサポーターで溢れていました。勝ったイングランドサポーターよりもそれに便乗している日本人の方が多く、警察官もハンドマイクを持って負けないくらい叫んでいます。ススキノ方面へ向かうと更に多くのサポーターがいて、ロビンソン前の交差点では車道まで人が溢れています、警察官も必死になって制止していますがとても無理。信号機の鉄柱に登ろうとしている者まで現れ、完全に混乱状態。マスコミ各社のテレビカメラも必死に現場を撮影しているが、それに映ろうと前に出てくる日本人。数百人の群衆が騒いでいますが、乱闘にはなっていない様子、イングランドが勝ったからいいようなものの、もし負けていたら暴動騒ぎになっていた可能性もありました。
ススキノ交差点
ススキノ交差点

観戦後記

私が初めてワールドカップをテレビで見たのは確か78年のアルゼンチン大会、当時中学校のサッカー部に所属していた私は眠い目をこすりながら見ていたのを覚えています。私は途中で退部しましたが、結構強い中学校で、後輩は全国大会にも出場したし、Jリーガーも輩出しています(余談ですが、少年マガジン連載の「シュート」にでてくる掛川のライバル「北海の氷壁」氷室がいる「鶴ヶ崎」と同じ名前の中学校です)。プレーヤーではなくなりましたが、サポーターとしてその後もサッカーを見続けてきました。当時はワールドカップが日本で開催されるなんて夢にも思っていませんでしたが、夢ではなかったのです。この試合は今大会注目ナンバーワンの好カードで世界中のファンがテレビを通じて観戦したことでしょう。セリエAやプレミアリーグで活躍する一流選手のプレイ、本場サポーターの応援、それを私はこの目で、生で見ることができて本当によかったです。サッカーに限らず音楽などライブで体験する感動や素晴らしさは、言葉や文字ではうまく伝えることができないかもしれません。しかし、この観戦記を通じて少しでもわかってもらえたら嬉しく思います。アルゼンチンを破ったイングランドには是非とも36年ぶりの優勝をしてもらいたいです。

30分
サネッティからのクロスのこぼれ球をキリがシュート
44分
オーウェンに対するファールによるPKをベッカムが決め先制

アルゼンチン
 
イングランド
前 半
後 半
合 計
前 半
後 半
合 計

先発メンバー
GK
12
パブロ・カバジェーロ   GK
デイビッド・シーマン
DF
マウリシオ・ポチェッティーノ DF
ダニー・ミルズ
DF
ワルテル・サムエル DF
アシュリー・コール
DF
13
ディエゴ・プラセンテ DF
リオ・ファーディナンド
MF
ファン・ソリン DF
ソル・キャンベル
MF
ハビエル・サネッティ MF
デイビッド・ベッカム
MF
11
ファン・ベロン MF
ポール・スコールズ
MF
14
ディエゴ・シメオネ MF
18
オーウェン・ハーグリーブス
MF
10
アリエル・オルテガ MF
21
ニッキー・バット
FW
ガブリエル・バティストゥータ FW
10
マイケル・オーウェン
FW
18
キリ・ゴンザレス FW
11
エミール・ヘスキー
得 点
      44分 デイビッド・ベッカム
交 代
MF
11
ファン・ベロン   MF
18
オーウェン・ハーグリーブス
16 パブロ・アイマール
15
トレバー・シンクレア
  後半開始   19分
FW
ガブリエル・バティストゥータ FW
11
エミール・ヘスキー
19 エルナン・クレスポ
17
テディー・シェリンガム
  60分   56分
FW
18
キリ・ゴンザレス FW
10
マイケル・オーウェン
クラウディオ・ロペス
13
ウェイン・ブリッジ
  64分   80
警 告
13分 ガブリエル・バティストゥータ   29分 アシュリー・コール
    50分 エミール・ヘスキー